まちの賑わいを飲食店数で可視化ー大阪編ー あなたの住みたいまちの特徴は?

大阪府内の市区町村別・人口1,000人あたり飲食店数を示すヒートマップ。北区・中央区・浪速区で高密度、郊外は淡い色で表示。 データで見る住みやすさ

食が映す「まちの温度」

大阪は「食の都」と呼ばれますが、その姿は一様ではありません。
北区・中央区・浪速区のように昼夜を問わず飲食店が集積する地域もあれば、豊中市・枚方市・泉佐野市など、住宅地としての性格が強い地域もあります。

同じ大阪府内でも、飲食店の分布には明確な差があります。
この違いは、商業や観光の集積度だけでなく、働き方や暮らし方、人の交流の形を映し出しています。

「飲食店の数」は、単なる業種の統計ではなく、まちの生活構造を示すひとつの指標です。
次の地図は、経済センサスの事業所データと国勢調査の人口統計をもとに、人口1,000人あたりの飲食店数を算出し、地域ごとの密度を可視化したものです。
地図上の色の濃淡は、都市の経済活動や人口密度だけでなく、日常の過ごし方の違いをも映し出しています。

今回は、人口1,000人あたりの飲食店数を「賑わい指標」として整理し、大阪全域の地域差をデータで読み解いていきます。

可視化①:大阪の「賑わい地図」

出典:経済センサス2021・国勢調査2020・国土地理院地図をもとにまちライフラボにて作成(Python/GeoPandas)

北区・中央区・浪速区といった大阪都心部は、圧倒的な店舗密度を誇ります。
ビジネス街・繁華街・観光地が重なり合うエリアでは、昼夜を問わず人が集まり、外食産業がまちの経済と生活を支えています。

一方で、北摂や南河内地域では、飲食店数が相対的に少なく、落ち着いた住宅地の性格が色濃く表れます。
駅前や幹線道路沿いに店舗が集中しつつも、日常の食事は自宅や近隣コミュニティの中で完結する傾向が見られます。

興味深いのは、泉佐野市や田尻町といった南部沿岸部です。
関西空港や観光施設の立地により、郊外でありながら一定の飲食店密度を維持しています。
交通結節点や観光動線が、地域経済にどのような影響を与えているかが読み取れます。

可視化②:大阪府下飲食店/市区町村ランキング

順位自治体名店舗/1,000人飲食店数
1大阪市中央区37.43,882
2大阪市北区33.84,715
3大阪市西区8.6906
4大阪市福島区8.5672
5大阪市浪速区8.2622
6大阪市天王寺区8.2673
7大阪市淀川区6.71,220
8大阪市都島区6.3680
9堺市堺区6.2915
10大阪市阿倍野区6.1681
11大阪市東成区5.5466
12門真市5.2621
13大阪市大正区5.2320
14藤井寺市5.1324
15大阪市此花区5.0323
16大阪市港区4.9396
17大阪市生野区4.8610
18泉佐野市4.7470
19池田市4.5474
20大阪市西成区4.4467
21泉大津市4.4326
22守口市4.2594
23大阪市東住吉区3.9501
24岸和田市3.9741
25東大阪市3.91,910
26田尻町3.832
27大阪市旭区3.6321
28四條畷市3.4190
29八尾市3.4908
30寝屋川市3.4783
31松原市3.3389
32大阪市住吉区3.3504
33大阪市東淀川区3.3577
34豊中市3.21,305
35堺市3.22,626
36高石市3.2176
37大阪市西淀川区3.2302
38大阪市住之江区3.1377
39貝塚市3.1262
40摂津市3.0265
41大阪市平野区3.0574
42堺市西区2.9399
43堺市北区2.9462
44茨木市2.9830
45大阪狭山市2.9168
46大東市2.9343
47大阪市城東区2.8478
48堺市中区2.8334
49高槻市2.7963
50和泉市2.7491
51吹田市2.61,018
52箕面市2.6361
53泉南市2.5152
54大阪市鶴見区2.5282
55柏原市2.5170
56枚方市2.4966
57堺市東区2.4204
58忠岡町2.439
59羽曳野市2.3250
60阪南市2.2115
61富田林市2.2239
62熊取町2.193
63千早赤阪村2.010
64河内長野市2.0205
65能勢町2.018
66交野市1.9143
67岬町1.928
68堺市美原区1.869
69堺市南区1.8243
70河南町1.523
71島本町1.341
72太子町1.013
73豊能町0.815

コラム:大阪市で“外食しやすい区”は?

大阪市内を区単位で見ると、外食環境の差がはっきりと表れます。
飲食店密度が最も高いのは北区・中央区・浪速区・天王寺区。いずれも繁華街やオフィス街、観光エリアを抱え、昼夜問わず人が行き交う地域です。仕事帰りの食事や友人との集まりなど、外食が生活の延長線上にあります。

一方で、鶴見区・東住吉区・平野区などは、落ち着いた住宅街の性格が強く、飲食店は生活圏の中で必要最低限に分布しています。自炊や家族との食事を中心とした「自宅完結型ライフ」を好む層にとっては、こうした環境がむしろ心地よいとも言えます。

同じ大阪市内でも、区ごとの「食の距離感」は大きく異なり、暮らし方の多様性を如実に映し出しています。

あなたの価値観で見る“住みたいまち”

外食が好きで、まち歩きや新しい店の発見を楽しみたい人には、中心部や駅前再開発が進むエリアが向いています。
多様な飲食店が徒歩圏に集まり、仕事帰りや休日の気分転換にすぐ立ち寄れる環境が整っています。

一方で、自然に囲まれた静かな生活や家庭中心の暮らしを重視する人には、北摂や南河内といった郊外エリアが適しています。
日常の買い物や外食の選択肢は限られるものの、落ち着いた時間と空間のゆとりがあります。

「仕事帰りに気軽な一杯を楽しむ」か、「週末に目的を持って出かける」か――。
その違いは、まちの性格であり、同時に暮らし方の選択でもあります。
住む場所を考えるとき、“食の距離感”という視点からまちを見つめ直すと、自分に合った生活のリズムが見えてきます。

「住みたいまち」は、所得や家賃といった経済条件だけでなく、行動の選択肢の密度で選ぶのも面白いかもしれません。

まとめ:他都市との比較

地域の飲食店の密度は、まちの経済活動を超えて“暮らしの脈拍”を映し出します。
外食が日常に溶け込んでいる地域ほど、人の往来が活発で、商業と生活が一体化しています。
一方で、店舗が少ない地域にも、家庭の食卓や地域コミュニティを中心とした穏やかな時間が流れています。

前回の京都編の記事との比較を通して見えてくるのは、同じ関西圏でも「食」と「都市構造」の結びつきがまったく異なるという点です。
大阪は、人口密度と商業集積の高さが外食文化を支え、生活圏の中に多様な飲食店が存在します。
一方の京都は、観光地や伝統産業の集積が中心で、地元住民の外食よりも観光需要に依存する傾向があります。

同じ“食のまち”でも、日常に根づく大阪と、観光を軸に展開する京都。
その差は、都市の成り立ちと経済構造の違いを如実に示しています。

次回の兵庫編では、「地形と商業の距離感」から、港町・山間地・ベッドタウンといった多様な暮らし方を読み解きます。
同じ関西でも、まちの形と人の営みのリズムがどのように変わるのか――その差が新たな発見を生み出します。

コメント

タイトルとURLをコピーしました