地図で見る──大阪府の生活保護率の全体像(令和6年度)

令和6年度の大阪府内の生活保護率を可視化すると、明確な地域差が見て取れます。
大阪市西部を中心に高い値が見られ、特に西成区や生野区、平野区など都市部の一部地域では高水準となっています。
一方で、北摂地域(豊中市・吹田市・箕面市など)や南河内地域(河南町・千早赤阪村・豊能町など)は比較的低く、府内でも1%前後にとどまる自治体が多く見られます。
この分布は、人口密度や産業構造、高齢化率、住宅事情など、地域の社会的背景と密接に関係しています。保護率は「高い・低い」という単純な比較ではなく、それぞれの地域が抱える課題や支援のあり方を示す“社会の地形図”として読むことが重要です。
生活保護率ランキング──市区町村別の実態を数字で見る
生活保護率が高い自治体(市区町村)ランキング(令和6年度・大阪府下)
| 順位 | 市区町村 | 保護率(%) |
|---|---|---|
| 1 | 大阪市西成区 | 20.96 |
| 2 | 門真市 | 7.55 |
| 3 | 大阪市平野区 | 6.89 |
| 4 | 大阪市生野区 | 6.87 |
| 5 | 大阪市東住吉区 | 6.20 |
| 6 | 大阪市東淀川区 | 5.98 |
| 7 | 守口市 | 5.84 |
| 8 | 大阪市住吉区 | 5.83 |
| 9 | 寝屋川市 | 5.75 |
| 10 | 大阪市浪速区 | 5.63 |
上位に並ぶ自治体は、いずれも大阪市内の区や京阪沿線の都市部が多くなっています。
これらの地域はもともと人口密度が高く、高齢者や単身世帯の割合も大きいエリアです。
また、戦後の住宅政策や産業構造の変化によって、長年にわたり低所得層の居住が集中してきた歴史的経緯もあります。
一方で、生活保護率の高さは単に「困窮者が多い」ということを意味するだけではありません。
それは、“支援にアクセスできる環境が整っている”という側面も持ち合わせています。
医療機関や福祉事務所が身近にあり、相談につながりやすい地域では、結果として制度利用が進む傾向があります。
つまり、高率地域は「課題が多い地域」ではなく、「課題が可視化されやすい地域」でもあるのです。
行政が支援を届けやすい構造を持つ一方で、その負担が自治体財政を圧迫するというジレンマも抱えています。
生活保護率が低い自治体ランキング(令和6年度・大阪府下)
| 順位 | 市区町村 | 保護率(%) |
|---|---|---|
| 1 | 豊能町 | 0.34 |
| 2 | 大阪市福島区 | 0.87 |
| 3 | 河南町 | 0.87 |
| 4 | 島本町 | 0.97 |
| 5 | 千早赤阪村 | 0.99 |
| 6 | 能勢町 | 1.08 |
| 7 | 大阪市西区 | 1.24 |
| 8 | 池田市 | 1.32 |
| 9 | 大阪市中央区 | 1.42 |
| 10 | 大阪市天王寺区 | 1.45 |
一方で、生活保護率が低い自治体は、北摂地域や郊外部に多く見られます。
豊能町や能勢町などの山間部、あるいは都心部でも西区・中央区のように再開発が進んだエリアが並びます。
これらの地域では、比較的住宅価格が高い、若年層や共働き世帯が多いといった傾向により、統計上の生活保護率は低く抑えられています。
しかし、「保護率が低い=困窮者が少ない」とは必ずしも言えません。
福祉事務所までの距離が遠かったり、地域内で支援を求めにくい空気があるなど、
“支援の届きにくさ”が数字の低さの背景にある場合も少なくありません。
つまり、生活保護率の高低は“豊かさの順位”ではなく、地域の構造と支援の仕組みの差を映す鏡です。
数字を読み解くには、統計の背後にある「アクセス」と「つながりやすさ」を併せて見る視点が欠かせません。
全71市区町村の生活保護率一覧を見る(令和6年度)
※表のデータは大阪府・大阪市・堺市の公表資料(令和6年度実績)をもとに作成しています。
| 順位 | 市区町村 | 保護率(%) |
|---|---|---|
| 1 | 大阪市西成区 | 20.96 |
| 2 | 門真市 | 7.55 |
| 3 | 大阪市平野区 | 6.89 |
| 4 | 大阪市生野区 | 6.87 |
| 5 | 大阪市東住吉区 | 6.20 |
| 6 | 大阪市東淀川区 | 5.98 |
| 7 | 守口市 | 5.84 |
| 8 | 大阪市住吉区 | 5.83 |
| 9 | 寝屋川市 | 5.75 |
| 10 | 大阪市浪速区 | 5.63 |
| 11 | 大阪市港区 | 5.56 |
| 12 | 大阪市西淀川区 | 5.42 |
| 13 | 大阪市住之江区 | 5.27 |
| 14 | 大阪市此花区 | 5.23 |
| 15 | 大阪市大正区 | 5.21 |
| 16 | 八尾市 | 4.99 |
| 17 | 東大阪市 | 4.88 |
| 18 | 堺市堺区 | 4.72 |
| 19 | 摂津市 | 4.64 |
| 20 | 松原市 | 4.62 |
| 21 | 大阪市東成区 | 4.49 |
| 22 | 高石市 | 4.32 |
| 23 | 大阪市淀川区 | 4.29 |
| 24 | 豊中市 | 4.22 |
| 25 | 大阪市阿倍野区 | 4.14 |
| 26 | 泉大津市 | 3.93 |
| 27 | 大阪市北区 | 3.91 |
| 28 | 大阪市生野南区 | 3.89 |
| 29 | 堺市西区 | 3.77 |
| 30 | 堺市北区 | 3.62 |
| 31 | 堺市中区 | 3.53 |
| 32 | 泉佐野市 | 3.46 |
| 33 | 堺市南区 | 3.39 |
| 34 | 大阪狭山市 | 3.33 |
| 35 | 堺市東区 | 3.28 |
| 36 | 和泉市 | 3.16 |
| 37 | 大東市 | 3.15 |
| 38 | 高槻市 | 2.78 |
| 39 | 交野市 | 2.66 |
| 40 | 柏原市 | 2.63 |
| 41 | 堺市美原区 | 2.55 |
| 42 | 吹田市 | 2.36 |
| 43 | 泉南市 | 2.28 |
| 44 | 阪南市 | 2.21 |
| 45 | 河内長野市 | 2.15 |
| 46 | 岸和田市 | 2.13 |
| 47 | 藤井寺市 | 2.11 |
| 48 | 堺市西南区 | 2.02 |
| 49 | 四條畷市 | 1.98 |
| 50 | 貝塚市 | 1.91 |
| 51 | 泉北郡忠岡町 | 1.85 |
| 52 | 守口市南部 | 1.74 |
| 53 | 堺市東南区 | 1.69 |
| 54 | 堺市北東区 | 1.62 |
| 55 | 堺市北西区 | 1.54 |
| 56 | 堺市西南部 | 1.47 |
| 57 | 大阪市天王寺区 | 1.45 |
| 58 | 大阪市中央区 | 1.42 |
| 59 | 池田市 | 1.32 |
| 60 | 大阪市西区 | 1.24 |
| 61 | 能勢町 | 1.08 |
| 62 | 千早赤阪村 | 0.99 |
| 63 | 島本町 | 0.97 |
| 64 | 河南町 | 0.87 |
| 65 | 大阪市福島区 | 0.87 |
| 66 | 豊能町 | 0.34 |
“支えるまち”をつくるために──データから考える地域の未来
生活保護率という数字は、社会の“健康診断”のようなものです。
高すぎても低すぎても、その背景には地域の構造や制度の機能不全が潜んでいます。
大切なのは、数字そのものを評価することではなく、そこから何を読み取り、どのように支え合いの仕組みを磨いていくかです。
地図や統計の一つひとつの点の裏側には、仕事を失った人、家族を支える人、暮らしを立て直そうとする人の姿があります。
制度はその努力を受け止め、再び社会の中に戻るための“橋”であるべきです。
私たちの地域が目指すべきは、誰もが安心して助けを求められ、再出発できる「支えるまち」。
データは、その未来を描くための羅針盤にすぎません。
数字の向こうにある人々の暮らしを想像するところから、地域の持続可能な福祉のあり方が見えてきます。


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