2025年10月4日、自民党の新総裁に高市早苗氏が選出されました。
奈良県出身の女性政治家が日本の政権与党を率いることになり、「女性リーダーの時代」の幕開けとして注目を集めています。
では、高市氏の地元:奈良の政治の現場では、女性の活躍はどこまで進んでいるのでしょうか。
本記事では、奈良県内すべての市町村議会について、会派別・政党別の女性議員比率を整理し、地域ごとのジェンダーバランスをデータで可視化しました。
数字の裏には、地域の政治文化や候補者擁立の仕組み、そして“女性が政治に関わり続けられる環境”の有無が浮かび上がります。
高市氏の出身地・奈良県の地方議会から見える、**「地方政治のジェンダー格差」**の実態を探ります。
奈良の地方政治の“いま”を数字で読む

女性議員比率トップは三郷町 54.5%(6/11)。県内で唯一、過半数に近い水準。
40%台が王寺町 41.7%(5/12)、生駒市 40.9%(9/22)。
30%台は橿原市 30.4%(7/23)。
20%台には広陵町 28.6%(4/14)、大淀町 27.3%(3/11)、宇陀市・川西町・上牧町・斑鳩町・平群町(いずれも 25.0%)が並ぶ。
県全体では 467議席中85議席が女性(18.2%)。中位例として、奈良市 16.2%(6/37)、大和郡山市 21.1%(4/19)、天理市 18.8%(3/16)、香芝市 18.8%(3/16)、葛城市 14.3%(2/14)。
女性議員“ゼロ”の自治体
依然として奈良県内に、女性議員が不在の自治体が8あります。
(十津川村、下北山村、上北山村、野迫川村、天川村、東吉野村、曽爾村、安堵町)
自治体の規模で傾向が分かれる
市の平均:18.3%(女性議員ゼロの自治体なし)
町の平均:22.7%(ゼロは安堵町の1町のみ)
村の平均:6.2%(女性議員ゼロが7村)
北西部の都市・近郊部で比率が高く、南東部の山間部では低い(ゼロが集中)という地理的偏りが見えます。
何が差を生むのか(示唆)
地図と数値から、次の構造が浮かび上がります。
- 候補者パイプラインの有無
PTA、NPO、地域協議会など、日常の社会参画の“間口”が広い地域ほど、議会の多様性に反映されやすい。 - 議会運営のしやすさ
会議時間の柔軟化やオンライン活用、議会内の保育支援などが、女性議員の在職継続を後押し。 - 定数と地域規模
小規模自治体は顔ぶれ固定化の圧力が強く、初回当選のハードルが上がりやすい。
高市氏の党総裁就任は象徴的転機ですが、地方の現場で裾野が広がるには“制度と運用”の改善が鍵。
三郷・王寺・生駒の事例からは、都市近郊での人材循環と参画機会の多さが効いていることが読み取れます。
奈良県内 市町村別 女性議員比率ランキング(2024)
| 順位 | 市町村名 | 女性議員数 | 議員総数 | 女性議員比率(%) |
|---|---|---|---|---|
| 1 | 三郷町 | 6 | 11 | 54.5 |
| 2 | 王寺町 | 5 | 12 | 41.7 |
| 3 | 生駒市 | 9 | 22 | 40.9 |
| 4 | 橿原市 | 7 | 23 | 30.4 |
| 5 | 広陵町 | 4 | 14 | 28.6 |
| 6 | 大淀町 | 3 | 11 | 27.3 |
| 7 | 宇陀市 | 3 | 12 | 25.0 |
| 8 | 川西町 | 3 | 12 | 25.0 |
| 9 | 平群町 | 3 | 12 | 25.0 |
| 10 | 上牧町 | 3 | 12 | 25.0 |
| 11 | 斑鳩町 | 3 | 12 | 25.0 |
| 12 | 大和郡山市 | 4 | 19 | 21.1 |
| 13 | 山添村 | 2 | 10 | 20.0 |
| 14 | 天理市 | 3 | 16 | 18.8 |
| 15 | 香芝市 | 3 | 16 | 18.8 |
| 16 | 黒滝村 | 1 | 6 | 16.7 |
| 17 | 河合町 | 2 | 12 | 16.7 |
| 18 | 奈良市 | 6 | 37 | 16.2 |
| 19 | 御杖村 | 1 | 7 | 14.3 |
| 20 | 高取町 | 1 | 7 | 14.3 |
| 21 | 葛城市 | 2 | 14 | 14.3 |
| 22 | 下市町 | 1 | 8 | 12.5 |
| 23 | 川上村 | 1 | 8 | 12.5 |
| 24 | 大和高田市 | 2 | 17 | 11.8 |
| 25 | 三宅町 | 1 | 9 | 11.1 |
| 26 | 明日香村 | 1 | 9 | 11.1 |
| 27 | 吉野町 | 1 | 9 | 11.1 |
| 28 | 五条市 | 1 | 12 | 8.3 |
| 29 | 御所市 | 1 | 12 | 8.3 |
| 30 | 桜井市 | 1 | 16 | 6.2 |
| 31 | 曽爾村 | 0 | 6 | 0.0 |
| 32 | 下北山村 | 0 | 6 | 0.0 |
| 33 | 天川村 | 0 | 7 | 0.0 |
| 34 | 東吉野村 | 0 | 7 | 0.0 |
| 35 | 野迫川村 | 0 | 6 | 0.0 |
| 36 | 安堵町 | 0 | 9 | 0.0 |
| 37 | 上北山村 | 0 | 6 | 0.0 |
| 38 | 十津川村 | 0 | 7 | 0.0 |
県内38自治体のうち、女性議員ゼロが8自治体(21%)。
上位は**北西部(生駒郡・北葛城郡エリア)**に集中し、下位は南部の山間地域が多い。
この分布は、人口規模・通勤圏・教育水準・地域ネットワーク構造と密接に関係していると考えられます。
所属会派別に見るジェンダー・ギャップ
奈良県内の市町村議会を所属会派別に集計すると、政党によって女性比率には明確な差が見られます。
下図はその構成を示したものです。

最も女性比率が高いのは立憲民主党(50.0%)で、県内では男女比がほぼ同数。
次いで日本共産党(35.4%)、**公明党(29.3%)**が続きます。
対照的に、**自由民主党は12.5%**と最も低く、**無所属(13.6%)や維新(25.0%)を下回っています。
奈良県内市町村の全体平均は18.1%**です。
政党別に見える構造
左派・中道政党は女性比率が高い傾向:
共産党や立憲民主党は比例代表や女性候補の公募を積極的に行っており、候補者層の多様化が進んでいます。
保守系は低水準にとどまる:
自民党や一部の地域無所属系では、候補者選定が地域ネットワークや推薦枠に依存するため、新規女性候補が入りづらい構造。
維新は中間層:
大阪を中心に若手女性議員の登用が進む一方、奈良県内ではまだ比率が25%にとどまり、他府県よりやや低め。
地方議会のジェンダー改革へ
データを俯瞰すると、政党文化・候補者選考制度・地域社会の構造が女性比率を決定づけていることがわかります。地域共同体のあり方と政党の文化は、女性の政治参加をどう“形づくっているか”を可視化する鏡でもあります。


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